中医学(中国伝統医学)は、古代中国から受け継がれた医学体系で、「自然との調和」を重視し、体全体のバランスを整えることで健康を維持する考え方です。病気の原因を「気」「血」「水(津液)」の不調や「陰陽」のバランスの崩れに求め、根本的な体質改善を目指します。
陰陽について:万物のバランスを司る原理
陰陽とは?
陰陽(いんよう)は、宇宙や自然界、人体を構成する基本的な法則です。
すべてのものは「陰」と「陽」という相反する二つの要素を持ち、互いに影響し合いながらバランスを保っています。
例えば
- 陰:冷たい・静か・内向的・収縮する性質(例:夜、月、水、女性)
- 陽:温かい・活動的・外向的・拡張する性質(例:昼、太陽、火、男性)
健康な状態とは、陰陽のバランスが取れていることを指します。陰陽のバランスが崩れると、病気や不調が現れます。
陰陽のバランスが崩れると?
- 陰虚(いんきょ)(陰が不足)
- のぼせやすい、口や肌が乾燥する、不眠、動悸がする
- 対策:潤いを与える食材(白きくらげ、梨、豆乳)を摂取
- 陽虚(ようきょ)(陽が不足)
- 手足が冷えやすい、疲れやすい、顔色が青白い
- 対策:体を温める食材(生姜、にんにく、羊肉)を摂取
陰陽のバランスを保つことで、健康を維持することができます。
気・血・水(津液)について:身体のエネルギーと循環
体の構成は?
中医学では、人体は「気」「血」「水(津液)」の三要素によって構成され、適切に循環することで健康が保たれます。
① 気(き)— 生命エネルギー
「気」は、体を動かすエネルギーであり、元気・活力・免疫力の源です。気の流れが悪くなると、疲れやすくなったり、体調を崩しやすくなります。
- 気虚(ききょ)(気が不足)
- 疲れやすい、風邪をひきやすい、声に力がない
- 対策:気を補う食材(高麗人参、山芋、大豆)を摂取
- 気滞(きたい)(気が滞る)
- イライラしやすい、胸や喉がつかえる、お腹が張る
- 対策:ストレスを減らし、適度な運動やリラックスを心がける
② 血(けつ)— 栄養と循環を司る
「血」は、体に栄養を供給し、精神の安定を保つ役割を持っています。血の不足や流れの悪さは、冷え性や肌の不調につながります。
- 血虚(けっきょ)(血が不足)
- 顔色が青白い、貧血気味、髪や肌が乾燥しやすい
- 対策:血を補う食材(なつめ、レバー、黒ごま)を摂取
- 瘀血(おけつ)(血の流れが悪い)
- 肩こり、生理不順、くすみやシミができやすい
- 対策:血の巡りを良くする食材(玉ねぎ、紅花、黒酢)を摂取
③ 水(すい)— 体内の水分バランス
「水(津液)」は、体を潤し、不要な老廃物を排出する役割があります。水分バランスが崩れると、むくみや乾燥、代謝の低下が起こります。
- 水滞(すいたい)(水の巡りが悪い)
- むくみやすい、胃腸が弱い、関節が痛みやすい
- 対策:利尿作用のある食材(とうもろこしのひげ茶、小豆、生姜)を摂取
五臓六腑について:内臓の働きと関係性
中医学では、内臓を「五臓(ごぞう)」と「六腑(ろっぷ)」に分け、それぞれが相互に関係しながら体の働きを維持すると考えます。
五臓(陰の臓器)— エネルギーを蓄え、生命を支える
- 肝(かん):気の流れを調整し、血を蓄える(ストレス・情緒の安定)
- 心(しん):血を巡らせ、精神活動を司る(睡眠・動悸)
- 脾(ひ):消化・吸収を助け、気血を生み出す(胃腸の健康)
- 肺(はい):呼吸と気の巡りを司る(免疫力・皮膚)
- 腎(じん):生命力を蓄え、成長・老化に関与(骨・髪の健康)
六腑(陽の臓器)— 消化・排泄を担当
- 胆(たん)
- 小腸(しょうちょう)
- 胃(い)
- 大腸(だいちょう)
- 膀胱(ぼうこう)
- 三焦(さんしょう)
五臓は「陰」に属し、生命活動の基盤を支えます。一方、六腑は「陽」に属し、食物の消化や排泄を行います。
五臓六腑の関係性とは?
中医学では、人体の臓器を「五臓(ごぞう)」と「六腑(ろっぷ)」に分け、それぞれが相互に関係しながら働くと考えます。
- 五臓(ごぞう):陰の性質を持ち、生命エネルギーや栄養を蓄える役割
- 六腑(ろっぷ):陽の性質を持ち、消化や排泄などの働きをする
五臓と六腑はペアを組んで機能し、健康を維持する仕組みになっています。
五臓六腑の働きと関係性
① 肝(かん)— 胆(たん)(自律神経と血の巡り)
肝の役割(陰)
- 気の流れをスムーズにし、ストレスをコントロール
- 血を貯蔵し、必要に応じて全身に供給
- 筋肉や目の健康を保つ
胆の役割(陽)
- 胆汁を分泌し、脂肪の消化を助ける
- 決断力や勇気に関与
肝と胆の関係
肝は「気」の流れを整え、胆はその流れに従って消化機能を助けます。ストレスが多いと「気滞(きたい)」が起こり、胆の働きが悪くなって消化不良や胸やけが起こることがあります。
肝胆の不調サイン
- イライラしやすい、怒りっぽい(肝の気滞)
- 目が疲れやすい、視力低下(血の不足)
- 胸や脇腹の張り(肝気の停滞)
- 胆が弱ると優柔不断になり、決断力が低下
養生法
- ストレスを溜めない(深呼吸、ヨガ、リラックス)
- 酸味の食べ物(梅干し、レモン、お酢)で肝をサポート
② 心(しん)— 小腸(しょうちょう)(血液循環と精神)
心の役割(陰)
- 血を全身に巡らせる
- 精神や意識をコントロール(「神(しん)」を宿す)
小腸の役割(陽)
- 消化した食物から栄養を吸収し、不要なものを大腸へ送る
- 体に必要なものと不要なものを「選別」する
心と小腸の関係
心が弱ると血の巡りが悪くなり、動悸や不眠が生じます。小腸の働きが悪くなると、栄養不足になり、血を作る機能が低下します。
心小腸の不調サイン
- 動悸がする、めまい(血の不足)
- 不眠、夢をよく見る(心の気が乱れる)
- 顔が赤くなりやすい(心火の亢進)
- 小腸の不調→ 消化不良、腹痛
養生法
- 苦味のある食材(ゴーヤ、緑茶、セロリ)を摂る
- 心を落ち着かせる(瞑想、深呼吸、睡眠をしっかり取る)
③ 脾(ひ)— 胃(い)(消化とエネルギー生成)
脾の役割(陰)
- 食べ物を消化し、「気血」を作る
- 体内の水分代謝をコントロール
胃の役割(陽)
- 食べ物を受け入れ、消化を行う
脾と胃の関係
胃は食べ物を受け入れて消化し、脾は栄養を吸収して「気血」を作ります。脾が弱ると、栄養がしっかり吸収されず、疲れやすくなります。
脾胃の不調サイン
- 食後すぐ眠くなる(脾の機能低下)
- 食欲不振、胃もたれ
- 体がむくみやすい(脾の水分代謝の低下)
養生法
- よく噛んで食べる(消化を助ける)
- 甘味の食材(かぼちゃ、さつまいも、なつめ)を摂る
④ 肺(はい)— 大腸(だいちょう)(呼吸と排泄)
肺の役割(陰)
- 気を全身に巡らせ、免疫力を維持
- 皮膚や毛穴をコントロール
大腸の役割(陽)
- 体の老廃物を排出
肺と大腸の関係
肺と大腸は「表裏関係」にあり、肺が弱ると便秘や下痢になりやすくなります。
肺大腸の不調サイン
- 咳や喘息(肺の弱り)
- 便秘や下痢(大腸の働きの乱れ)
養生法
- 辛味の食材(生姜、ネギ、大根)を摂る
- 深い呼吸を意識し、肺を強くする
⑤ 腎(じん)— 膀胱(ぼうこう)(生命力と水分代謝)
腎の役割(陰)
- 生命エネルギー(精)を蓄え、成長や老化をコントロール
- 骨や髪の健康を維持
膀胱の役割(陽)
- 体内の水分を排泄する
腎と膀胱の関係
腎が弱ると膀胱の機能も低下し、頻尿やむくみが起こります。
腎膀胱の不調サイン
- 腰や膝が痛い(腎のエネルギー不足)
- 頻尿、夜間のトイレ回数が多い
養生法
- 黒い食材(黒ごま、黒豆、昆布)を摂る
- 冷えを防ぐ(下半身を温める)
五臓六腑はそれぞれ密接に関係しており、どこか一つが弱ると全体のバランスが崩れます。自分の体調を観察し、日々の生活習慣や食事で整えていくことが健康維持のポイントです。
中医学の基本的な考え方のQ & A
- 中医学と西洋医学の違いは?
西洋医学は「病気の原因を特定し、それを治療する」ことに重点を置きます。一方、中医学は「体全体のバランスを整え、自然治癒力を高める」ことを目的とします。
- なぜ「冷え」が良くないの?
冷えは血行不良を引き起こし、内臓の機能低下や免疫力の低下につながるためです。特に女性は冷え性になりやすいので、体を温める習慣を大切にしましょう。
- なぜ「冷え」が良くないの?
冷えは血行不良を引き起こし、内臓の機能低下や免疫力の低下につながるためです。特に女性は冷え性になりやすいので、体を温める習慣を大切にしましょう。
- 食べ物で体質を改善できる?
はい。中医学では「医食同源」と言い、食べ物が薬のように体質を改善すると考えます。自分の体質に合った食事を摂ることが大切です。
- ツボ押しは効果があるの?
ツボ押し(経絡マッサージ)は、気血の流れを改善し、自然治癒力を高めるとされています。例えば、「合谷(ごうこく)」のツボを押すと、頭痛やストレス解消に効果が期待できます。
- 中医学はどんな人に向いている?
体調がすぐれないが病院では「異常なし」と診断された人、慢性的な不調を改善したい人、自然な方法で健康を維持したい人におすすめです。
まとめ
中医学では、「陰陽のバランス」「気・血・水の調和」「五臓六腑の健康」が重要とされています。
自分の体質に合った生活習慣や食事を心がけることで、健康を維持しましょう。